内蔵グラフィック(オンボード)で何ができるか進化した現実と、それでも越えられない壁
昔、グラボのないPCでAPEXができるか調べたとき、まともに答えてくれるページがなかった。 ベンチマーク記事はあっても「RTX 4090が何fps出た」みたいな話ばかりで、 「手元の内蔵グラフィックでどこまでいけるか」を知りたいだけなのに、どこにも書いていない。 この記事はその疑問に答えたくて書きました。
結論から言うと、内蔵GPUは数年前とは別物になっています。 特にAMD Ryzen 7000シリーズのRadeon 780Mは、エントリークラスの単体グラボと 比べても遜色ない場面がある。ただし全部が動くわけじゃない。 どこまでできて、どこで壁に当たるか。正直に書きます。
内蔵GPUはここまで変わった
10年前のIntel HD Graphicsは、ゲームに使おうとすると「一応起動する」レベルが限界でした。 現在の内蔵GPUは世代が変わるたびに大きく性能が上がっており、特に以下の2つが現実的な選択肢です。
Core i5〜i9に内蔵。かつてのHD 4000と比べると2〜3倍の性能がありますが、 現代のゲームには依然として力不足な場面が多い。ただし軽量ゲームやブラウザ用途なら十分です。
Ryzen 7 7745HXや7840U等に内蔵されたRDNA2アーキテクチャの統合GPU。 これは別格で、GTX 1650に近い性能を出す場面があります。 ノートPCや小型デスクトップ(Ryzen 7000Gシリーズ)に搭載されています。
ゲーム別:動くか、動かないか
※ 設定は全て「最低〜低設定」が前提。60fps安定を求めるなら記載より1段階厳しく見てください。
| ゲーム | Intel UHD 770 | Radeon 780M | 備考 |
|---|---|---|---|
| ドラクエ10 オンライン | ✅ 動く | ✅ 快適 | 低〜中設定 1080p |
| APEX Legends | △ ギリギリ | ○ 遊べる | 最低設定 720〜1080p |
| Fortnite | △ ギリギリ | ○ 遊べる | 最低設定 720〜1080p |
| Minecraft(バニラ) | ✅ 快適 | ✅ 快適 | シェーダーなし |
| Minecraft(シェーダー) | ✗ 厳しい | △ 軽めなら | SILDUR's Lite等 |
| LoL / VALORANT | ○ 動く | ✅ 快適 | グラフィック軽量ゲーム |
| 原神 | ✗ 厳しい | △ 低設定なら | 30fps前後、不安定 |
| Elden Ring | ✗ 無理 | ✗ 無理 | 要グラボ |
| Cyberpunk 2077 | ✗ 無理 | ✗ 無理 | 要グラボ |
| FF14(ベンチ) | △ 低品質なら | ○ 標準品質 | 1080p |
ドラクエ10について:公式の推奨スペックがIntel HD 4000相当と低めに設定されており、 現代の内蔵GPUなら余裕があります。1080p・中設定でも問題なく動く環境が多い。 もし「オンボードで何かゲームしたい」の入口としては最適な選択肢です。
APEXについて:「動く」と「競技で使える」は別の話。UHD 770では最低設定720pで30〜50fps程度が現実的で、 動体視力が求められる競技環境には向きません。カジュアルに楽しむ用途と割り切るなら可能。 Radeon 780Mなら1080p低設定で40〜60fps程度出るため、もう少し現実的になります。
Minecraftについて:バニラ(シェーダーなし)なら内蔵GPUで問題なし。描画距離を絞れば快適に動きます。 シェーダー導入はRadeon 780Mでも軽量なものに限定した方が無難です。
AIの用途:ローカルLLM・画像生成はどうか
2026年現在、ローカルでAIを動かしたいというニーズが増えています。 内蔵GPUでどこまで使えるか。
| 用途 | Intel UHD 770 | Radeon 780M | 備考 |
|---|---|---|---|
| ローカルLLM 7Bモデル | ○ CPU推論 | ○ GPU補助あり | Ollama等。4〜8トークン/秒 |
| ローカルLLM 13Bモデル | △ 遅い | △ 遅い | 2〜4トークン/秒 |
| Stable Diffusion(512px) | ✗ 非実用 | △ 数分かかる | DirectML経由 |
| Stable Diffusion(SDXL) | ✗ 無理 | ✗ 厳しい | VRAM不足 |
| AI動画生成 | ✗ 無理 | ✗ 無理 | 要グラボ(最低でもRTX 4060) |
| AI画像(クラウドサービス) | ✅ 関係なし | ✅ 関係なし | GPUはサーバー側 |
| Copilot / ChatGPT(ブラウザ) | ✅ 関係なし | ✅ 関係なし | ブラウザで動く |
ローカルLLMについて:OllamaなどのツールでLlama 3(8B)やGemma 3(4B)を動かすことはできます。 GPUオフロードは難しいケースも多いため実質CPU推論になりますが、 現代のCore i5/Ryzen 5なら4〜8トークン/秒程度は出ます。 会話用途なら実用範囲内。ただしコード補完をリアルタイムで使いたいなら遅さが気になるレベル。
Stable Diffusionについて:Intel UHDでDirectMLを使って動かすことは技術的には可能ですが、 512×512の画像を1枚生成するのに5〜15分かかります。趣味で試す用途にしかなりません。 Radeon 780Mなら数分程度に短縮できますが、それでも実用的とは言えない。 画像生成AIを本格的に使いたいなら、最低でもVRAM 8GBの単体グラボが必要です。
クラウドAIサービスについて:ChatGPT・Claude・Geminiなどはブラウザで動くため内蔵GPUは関係ありません。 AIを使うこと自体はどんな環境でもできます。「ローカルで動かす」かどうかが分岐点です。
それでも越えられない壁
ここまで「動く」ものを紹介してきましたが、正直に言うと内蔵GPUには明確な限界があります。
内蔵GPUはシステムRAMを共有するため、実効VRAMは多くて4〜8GB程度。 最新のAAA級ゲームやStable Diffusion XLはVRAM 8〜12GBを要求するため、構造的に厳しい。 いくらCPUが高性能でも、ここは超えられません。
単体グラボは専用のGDDR6メモリを持ち、数百GB/sの帯域があります。 内蔵GPUが使うDDR5システムRAMでも80〜90GB/s程度。 これがグラフィック性能のボトルネックになっており、設定を下げても補えない場面が出てきます。
Stable Video DiffusionやWan2.1などのAI動画生成は、RTX 4060(VRAM 8GB)でも数分かかります。 内蔵GPUで実用的に使うのはほぼ不可能。この用途はグラボを用意する前提で考えた方がいい。
結論:内蔵GPUとどう付き合うか
✅ ドラクエ10・軽量MMOをまったりやる → 内蔵で十分
✅ Minecraftを遊ぶ → 内蔵で十分(シェーダーは慎重に)
✅ LoL・VALORANTをカジュアルに遊ぶ → Radeon 780Mなら現実的
✅ ローカルLLMでAIを試す → CPU推論で可能、ただし遅い
⚠️ APEXを競技レベルでやりたい → グラボを検討した方がいい
⚠️ Stable Diffusionで画像生成したい → RTX 4060以上を推奨
✗ 最新AAA・AI動画生成・ローカル大規模モデル → グラボ必須
「グラボを買う予算がない」「今すぐには無理」という状況は珍しくありません。 内蔵GPUでできる範囲を把握した上で、必要になったタイミングでグラボを追加するのが現実的な判断だと思います。 中古のRTX 3060あたりは価格が落ちてきており、次のステップの候補として見ておく価値があります。