メモリ 16GB vs 32GB:DDR5時代に「後から増設すればいい」が通用しなくなった理由
「16GBで足りるか」という問いへの答えは、用途によって全然変わる。 ゲームだけなら今でも 16GB で戦えるし、ローカルAI を動かすなら 32GB でも足りないケースがある。 ただ DDR5 環境では、価格差の話だけでなく「構造上の問題」が判断を変える。
価格差の話と、DDR5特有の落とし穴
数年前は 16GB と 32GB の差が ¥8,000〜10,000 あった。今は DDR5 の相場が下がり、 16GB(8GB×2)と 32GB(16GB×2)の差は ¥3,000〜5,000 程度になっている。 この価格差なら「とりあえず 32GB にしておく」方がリスクが低い、という判断は正しい。
ただ DDR5 の場合、価格差以前に知っておくべき構造上の問題がある。
DDR5 の 8GB モジュールは、多くの製品で内部のメモリダイ構成が 16GB モジュールと異なり、 Bank Group 数が少ない設計になっているケースが多い。 これはメモリの実効帯域幅に直結し、同じ型番・同じクロックでも 8GB×2 は 16GB×2 より性能が出ない製品が存在する。 全製品に当てはまるわけではないが、DDR5 で 8GB モジュールを選ぶリスクはDDR4より高い。
「足りなくなったら 8GB×2 を追加して 4 スロット埋めて 32GB にすればいい」という発想は、 DDR4 時代の常識だ。DDR5 ではスロットを 4 枚埋めると、信号の負荷が増えてマザーボードが メモリクロックを強制的に落とす。6000MT/s のメモリが 4000MT/s 以下でしか動かなくなることもある。 増設ではなく、最初から 16GB×2(32GB)で組むのが正解だ。
DDR4 は事情が違う。DDR4 の 16GB(8GB×2)は今 ¥4,000 台と安く、上記の帯域幅問題も構造上起きにくい。 サブ機や古い構成で迷っているなら、用途をちゃんと見た上で選べばいい。
用途別の判断
| 用途 | 16GB | 32GB |
|---|---|---|
| ゲームのみ | 今は足りる | 過剰 |
| ゲーム+ブラウザ・Discord | ギリギリ〜詰まる | 快適 |
| ゲーム実況・配信 | 厳しい | 推奨 |
| 動画編集(1080p) | なんとかなる | 快適 |
| 動画編集(4K) | しんどい | 推奨 |
| ローカルLLM(7B) | 動くが遅い | 現実的 |
| ローカルLLM(13B以上) | ほぼ無理 | ギリギリ〜快適 |
| ブラウジング・オフィス作業 | 余裕 | 過剰 |
ゲーム:16GB でまだ戦えるが、条件がある
2026年現在、多くのゲームの推奨メモリは 16GB だ。ゲームを起動しているだけなら 16GB で快適に動くタイトルがほとんどだ。
問題は「ゲームだけ」では遊ばない場合だ。Chrome で攻略 Wiki を開き、Discord でボイチャをしながらゲームを起動する。 これが現実的な使い方で、この状態で 16GB はかなり圧迫される。 タスクマネージャーを開くと使用率が 85〜90% に達していることも珍しくない。
最近の大型タイトルはメモリ消費が増え続けており、1〜2年後には 16GB が推奨から外れるゲームが増える可能性がある。 長く使うPCを組むなら、32GB にしておいた方が後悔が少ない。
ローカルLLM・AI:メモリ帯域がトークン速度を決める
ローカルLLM を CPU オフロードで動かす場合、モデルのサイズがそのままメモリ消費に直結する。 4bit 量子化した 7B モデルは約 4〜5GB、13B モデルは 8〜10GB 程度のメモリを使う。 OS やバックグラウンドプロセスが 4〜8GB を消費するため、13B 以上は 16GB では実際に厳しい。
容量の話だけではない。CPU オフロード推論ではトークン生成速度(tk/s)のボトルネックになるのは CPU の計算力ではなく、メインメモリの帯域幅だ。 モデルの重みをメモリから読み出す速度がそのまま応答速度に直結するため、 DDR5 と DDR4 では同じモデルを動かしても体感できる差が出る。 前述の「DDR5 8GB モジュールの帯域幅問題」は、AI 推論においてとくに影響が大きい。
32GB あれば 13B モデルをそこそこ快適に動かせるが、70B クラスは 32GB でも厳しい。 本格的にローカルLLM を使うなら 64GB が現実的なスタートラインになる。
→ DDR5とAI推論の関係は「DDR5は速いだけじゃない:AI推論でメモリ帯域が直接効く理由」で詳しく書いた。
動画編集:解像度で判断が変わる
1080p の動画編集なら 16GB でも作業できる。Premiere Pro や DaVinci Resolve で 1080p のタイムラインを組む分には、 よほど複雑なエフェクトをかけない限り詰まらない。
4K になると話が変わる。4K RAW や 4K ProRes を扱うなら 32GB は欲しい。 プレビューのスムーズさが 16GB と 32GB では体感できるレベルで変わる。 After Effects を並行して使うなら 32GB でもタイトだ。
結論:DDR5 なら 16GB×2 一択、DDR4 なら用途次第
DDR5 環境で組むなら、選択肢は 16GB×2(32GB)の 2 枚構成 一択だ。 8GB モジュールは帯域幅の問題を抱えやすく、後から増設しようとすると 4 枚挿しのクロック低下が待っている。 価格差の小ささと合わせると、最初から 32GB にしない理由がほぼない。
DDR4 の場合は用途次第でいい。普通の作業しかしないなら 16GB で十分だし、 ゲームとブラウザを並行するなら 32GB を選ぶ。DDR4 の増設は DDR5 より安定しているので、 後から足す選択肢も現実的に残っている。
ローカルAI を視野に入れているなら、最初から 32GB か 64GB、かつ DDR5 で構成するのが素直だ。 メモリ帯域がモデルの応答速度に直結するため、ここをケチると後から後悔することになる。